ここは不思議な場所だ。
ぼくはいつまでもぼくの姿をしているのに、後から来た人たちは皆、透明な霧みたいになって、やがて姿が見えなくなる。
ある時、急に優しい風が吹いた。
懐かしい誰かの匂いがして現れたのは女の人だった。
その人はぼくに気付くと、にこりと微笑んだ。
そして言った。
「私の父を知るあなたは誰なの?」
そうだ、ぼくの名はマリス。
ここで長い間漂ってる内に、自分が誰なのかわからなくなりそうになってたけど、もう忘れない。
マリス、文月マリスだ。
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