ジウランの航海日誌 (3)

 Chapter 5 ケイジの旅立ち

20XX.8.XX 気高き女王

 シップは五日かけて《花の星》に到着した。
「お待ちかねの《花の星》だぜ」
「とうとうあたしたちは太陽系外の星に来た人間になったんですね?」と美夜が感慨深げに言った。
「――あ、ああ。事実の世界が戻ればそうじゃなくなるけどな」
「そうでしたね」
 ジュネ皇女に会うつもりか、じいちゃんに尋ねた。
「ジュネ皇女じゃなくてジュネ女王だ。以前の記憶が残ってるなら話は早いけどな」
 でも《歌の星》の王様には呼ばれて出かけてたんでしょ?
「言っただろう。重要な役割を占めていた人物ほど記憶が残ってない。ジュネはどっちだかな」
 シップは緑の多い大地の上をしばらく飛んでポートに着陸した。
 すぐに迎えの車両がきて、ぼくらを乗せてゆっくりと走り出した。

 王宮で待っているとジュネ女王が姿を現した。ぼくたちは女王の前で跪いたままで、じいちゃんが一人ずつ紹介していった。
「《青の星》から来られたとか。長旅、ご苦労であったな。かの星の人間に会うなど初めての事」
「どうやら事実の世界の記憶はなさそうだ」
 じいちゃんがぼくの耳元で囁いてからジュネ女王に向かって口を開いた。
「なあ、ジュネ。こんな話し方しかできないんで勘弁してくれよ。あんた、本当に《青の星》と聞いても何も思い出さないかい?」
 女王の前で跪いていたぼくと美夜は驚いて言葉が出なかった。じいちゃん、いくら何でもその言葉使いはないんじゃないか。
「あら、気にしてないわよ。元々あたしもこんな口調だし――《青の星》の記憶って、あの夢を言ってるのかしら。だとしたら気持ち悪いわね」
「気持ち悪いって言われてもなあ。それは夢じゃなくて事実の世界の記憶の断片だからな」
「どういう意味よ。詳しく話してごらんなさいよ」

 
「ふーん、あたしがねえ。銀河の英雄と結婚かあ。あたしのお眼鏡に叶うだけの男がいたって訳ね。そっちの方がずっと素敵ね」
 じいちゃんが一通りの話を終えるとジュネ女王が言った。
「まあそう言ってくれれば話は早い」
「で、あんたたちはその事実の世界を取り戻すために旅に出た。でもここに寄った目的は何?あたしにいい男の話を聞かせるためだけじゃないでしょ?」
「もちろんだ。あんたに力を貸してほしい。わしらには『鎮山の剣』が必要だ」
「何それ?」
「《愚者の星》の奥深くに眠ってるお宝だ」
「あらあら、そんなのあたしだけじゃ無理。イワクの王宮は深い毒ガスの中だし、それに王宮を守る毒樹は無敵だって言われてるわ」
「そうかい。やっぱり難しいんだな」
「お力になりたいのはやまやまだけど――だったらあいつらに頼んでみれば?」
「あいつら?」
「一人は海賊コメッティーノ、そしてもう一人は《商人の星》の用心棒をしているゼクトよ」
「面白い名前が出てきたな。じゃあ早速二人に頼んでみるか」
「あたしにできる事があれば何でも言って。今の世界には存在していない沙耶香をどうにかしてあげなくちゃいけない気がするの」
「ああ、あんたは沙耶香と仲が良かった、いや、あんただけじゃない、アダンもミミィも葵もニナも皆、実の姉妹みてえなもんだったからな」

 

登場人物:ジウランの航海日誌

 

 
Name

Family Name
解説
Description
ジュネパラディス《花の星》の女王
ゼクトファンデザンデ《商人の星》の商船団のボディーガード
コメッティーノ盗賊
ハルナータ《賢者の星》の最後の王
アダンマノア《オアシスの星》の指導者
エカテリンマノアアダンの母
リチャードセンテニア《鉄の星》の王
ニナフォルスト《巨大な星》の舞台女優
ジェニーアルバラード《巨大な星》の舞台女優
《巨大な星》、『隠れ里』の当主
陸天《念の星》の修行僧
ファランドール《獣の星》の王
ミナモ《獣の星》の女王
ヌニェス《獣の星》の王
マフリセンテニアヌニェスの妻
公孫転地《武の星》の指導者
公孫水牙転地の子
ミミィ《武の星》の客分
王先生《武の星》の客分
ランドスライド《精霊のコロニー》の指導者
カザハナ精霊
アイシャマリスのパートナー
デプイマリスのパートナー
マリス覇王を目指す者
マルマリスの父
ツワコマリスの母

 

 Chapter 5 ケイジの旅立ち

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