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20XX.8.5 決断の時
朝一番でじいちゃんがやってきた。
じいちゃん、毎日どこに泊ってるの。うちで寝ればいいのに――
「気にするな。それより『パンクス』に行くぞ。ケイジたちと最後の打ち合わせだ」
じいちゃんはお台場の近所にぼくと美夜を連れだすと、近くのあまり人気のないビルの地下に潜り、慣れた手つきで隠し階段を出した。
そこから少し歩くとすぐにこの間連れていかれた地下の建物に出た。
大広間で待っていると天野さんとケイジがやってきた。今日はケイジが気配を消さずにいたので、白い着物に紺の袴を身に付けているのがわかった。
「デズモンドさん。いよいよですな」と天野さんが声をかけた。
「ああ、若い者の足を引っ張らないようにするさ」
「こちらもできる限りの事はしておきますよ」
ケイジがぼくをちらっと見た。
「ジウラン。遠慮するな。お前の全ての力を開放すれば道は開ける」
ケイジは美夜に視線を移した。
「師匠、行って参ります」
「うむ。美木村もお前を守ってくれる。未来がどうなるかなど気にせずに行動しろ」
「はい。でも」
「心配するな。ナインライブズのない世界では私も消えはしない」
「わかりました」
ケイジは最後にデズモンドを見た。
「あの男、藪小路と初めて出会ってから何千年経っただろう。とうとう終わるな」
「ああ、わしも戦前からなんでそこそこ長い付き合いだが、あんたはサフィの頃からだもんな。腐れ縁ってやつだ」
「ふふふ、なあ、デズモンド。全てが終わった世界はどんな空だろうな」
「ははは、そんなのはリンに頼めば何色にだって変えてくれらあ。だがいつもと同じかいつもよりちょっと青い空にしといてもらおうぜ」