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Record 1 観光ステーション
「そこのシップ、ちょっといいですか?」
突然、シップの中に声が響いた。
「おい、どうした、JB?」
「わからねえが……なるほどな、進行方向を見てみろよ」
「これから俺たちが向かう星団が見えるだけじゃねえか」
「そこじゃねえよ。もっと手前にステーションが浮かんでんだろ」
「ああ、でも、あれはマーチャントシップのステーションだろ」
「あそこから呼びかけてるみたいだぜ」
JBは目の前に見える大きなポートを備え付けたステーションに向かって自らのシップの所属と航行の目的を告げた。
「――という訳でマーチャントシップではないんだ。悪いな」
「いえいえ、マーチャントだろうとソルジャーだろうと関係ありませんよ。《大歓楽星団》に行かれる方は必ず立ち寄って頂かないと。何しろポートはここにしかございません」
「ああ、何だって?」
「そりゃあそうでしょう。シップでそのまま乗り込まれたら何をされるかわかりません。もちろん武器も携行禁止です。ここは紳士淑女の社交場ですからね」
「ふーん、わかったよ。ステーションに寄ればいいんだな」
「どうもどうも。このステーションの管理官、イサでございます」
ステーションの脇に建てられたポートにシップを停めて外に出ると、髪をべったりと左右均等に撫で付けた小柄なちょびひげの男が走り寄った。
「連邦の方々ですから万が一にもと思いますが、規則なんで――すみませんね」
イサは何度もお辞儀しながら、わしらが武器を持っていないか確認した。
「なあ、あんた。管理官とか言ってるが、つまりはポン引きだろう」
「ポ……いやあ、これは参りましたなあ」
「よそいきの話し方じゃなく、いつも通りにやんなよ」
「それではお言葉に甘えて――旦那方、何が好みだい。この星団には何だってあるぜ」
「星団と言っても別々の星団に四つの星があるんだろ?」
「ああ、そうさ。ご家族向きは《幻惑の星》、キレイな洋服や姉ちゃんに囲まれたきゃ《魅惑の星》、ギャンブルしたけりゃ《誘惑の星》、そして、日常を離れて羽目をはずしたきゃ《蠱惑の星》ってな具合だな」
「俺たちゃ、その全部に寄りたいんだ」
「そいつは太っ腹なこった。観光シップが巡回してるからそれに乗ってくれ――でも旦那方、本当の目的は何だい?」
「歴史を調べにきたんだよ。『めくるめく一時』を過ごしたい訳じゃない」
「歴史か。さしずめ閃光覇王がいた頃の話が知りたいのか?」
「シロンの歴史を綴りたいんだ」
「ほぉ。だったら《魅惑の星》のムスクーリ家の屋敷ははずせねえなあ。それに《誘惑の星》のシロンの生家、《蠱惑の星》の都ダダマスはシロンが初手柄を立てた場所だ」
「あんた詳しそうだから、あんたに案内してもらうかな」
「ちょっと待ってくれ。ポン引きが連邦の学者様を案内する訳にはいかないよ。その代わり、普通じゃ行けない場所に入れるように手配しておいてやるからよ」
「おお、そりゃあ助かるな。恩に着るぜ、イサ」
「大した事じゃねえよ。このへんの奴は皆、シロンが大好きだ。あいつの魂が浮かばれるように、せいぜいいい報告、書いてやってくれよ、な」
「歴史を捻じ曲げる訳にはいかねえんだよな」
「大丈夫だ、シロンは何一つ後ろめたい事はしちゃいねえ。悪いのは全部――チオニのくず共だ」
「わかった、イサ、また帰りに寄るよ。観光シップの乗り場まで案内してくれ」