3.8. Story 1 デルギウスの願い

 Story 2 死人返し

1 《青の星》へ

 銀河連邦の設立から数十年が経った。デルギウスの多忙な日々は続き、休みを取る事さえままならぬ状態の中で精力的に職務をこなした。
 顔には数本の皺が刻まれ、さすがに青年と呼ぶのは憚られる立派な大人の王になった。

 クシャーナは連邦設立の五年後にリリアと結婚をし、《歌の星》に戻った。子供を設け、幸せな家庭を築く一方、星の指導者として復興に尽力した。

 ファンボデレンは銀河連邦の総司令として銀河一の船団を率いた。ケミラと共同開発した超大型シップには『ファンボデレン級』と言う名が付けられ、史上最強の呼び声も高かった。

 メドゥキは《七聖の座》の行政の長として辣腕を振るった。その一方、私生活は派手で、正式な結婚をしないまま様々な女性と浮名を流した。《七聖の座》だけでなく《商人の星》にも連邦大学と行政府を設置し、両方の星を忙しく行き来していた。

 兆明は《念の星》で以前通りの修行の生活に戻り、心静かに暮らした。

 そして、ノカーノはデルギウス以上に外見の若さを保ったままだった。長命な種族、と言ってしまえばそれまでだったが、会った人間は誰もが数十年間変わらぬその容姿に驚いた。
 相変わらず記憶は戻らないままで、特に帰る場所もなかった。好き勝手に星を放浪して、しばらくしてから《鉄の星》に顔を出す。ひどい場合、数年間音信不通という事もあった。

 
 今日もほぼ三年ぶりにノカーノが『輝きの宮』を訪れた所だった。デルギウスは浮かない顔でノカーノと向き合った。
「ノカーノ。どこに行っていた?」
「《流浪の星》さ」
「三年もの間?」
「ああ、妙な話でね。ロアランドという町で記憶が途切れ、気が付いたら三年経っていた」
「元々、記憶のない君がまた記憶を失うなんてどういう話だろうな」
「後で町の人に聞くと『台地の民』に拉致されたんじゃないかって事でね。私は旅人だし、三年で解放されたって話だったよ」
「……伝説では聖ニライの末裔たちか。ずいぶんと凄い人たちに見込まれたものだな」
「まあ、無事だったから良かったけどね――ところでデルギウスこそ浮かない表情をしてどうしたんだい?」

 
「……実は君に頼みがある。《青の星》に行ってくれないか。この数十年、ずっと心の底に引っかかっている事がある」
「いいけど何をすればいい?」
「そこに女性がいる。その方と話をして、もし困っているようであれば助けてやって欲しい。本来なら私が行きたいが、ご覧のように日々雑務に追われ手が離せない。気が付けば歳月ばかりが過ぎていくという訳だ」
「でも君が《青の星》に行った時の話だったとしたら、それから大分経つんじゃないか?」
「うむ、あの星の人間の老化の程度というものがよくわからない。文明レベルからするとものすごく短命な種族かもしれない。けれどもこれをすっきりさせないと、私は……」
「結婚もできないか。仕方ないな。難しそうだけどやってみるよ。その人の名は?」
「ローチェだ。星で一番の大帝国の都にいるはずだ」
「わかった。あまり期待せずに待っててくれ」

 

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