3.6. Story 2 大砂漠

 Chapter 7 七聖の誕生

1 笛

 デルギウスは久々に一人でシップを操縦した。目的地は《享楽の星》だった。デルギウスの懐には一本の笛が納まっていた。

 
 出発の朝、デルギウスはメドゥキを呼び出した。
「メドゥキ、そう言えば《享楽の星》から盗んだお宝があったな」
「これだよ」
 メドゥキはそう言うと一本の木でできた笛を差し出した。
「用意がいいな」
「兄貴、あそこは注意した方がいいぜ」
「何だ。化け物でも出るのか」
「いや、その逆で――何も出ないんだ」
「なら心配ないじゃないか」
「出ないんだが何かに見張られてる気がしたんだよ」
「それは妙だな。今、《享楽の星》の王は?」
「ずいぶん昔に起きた反乱以来、王は不在らしくて星は四人の都督が治めている」
「ディーティウスが以前に言っていたな。都が襲われて犯人が異次元に逃げ込んだと。では王はその時に亡くなられたのか?」
「案外まだ生きてるんじゃねえか。表舞台に登場しなくなったんで生死不明って事らしいが、何しろ『開明王』って言われるくらいの名君だったって話だ。あの星が平和なのは今でもその方の力に依る所が大きいんじゃねえかね」

「とするとお前を見張っていたのはその王かな。今も健在となるとすいぶんな年齢のはずだな」
「まあ、長生きな人間ばっかりの星もあるしな」
「それもそうだ。で、この笛はただの笛か?」
「さあ、おいらもどんな由来のお宝かよくわからない。というか、実は大した事ないのかもしれねえ。その笛はおいらが王宮をどうにかして発見して忍び込もうとした時に、たまたま傍にあった大樹から降ってきたんだよ。捨てるのも勿体ないと思って懐に忍ばせただけなんだ」
「ん、王宮を発見とはどういう意味だ?」
「行ってみりゃあわかるよ」
「誰に返せばいいか、わからないのか」
「このまんま、もらっといてもいいんじゃねえか」
「いや、そうはいかない。とにかく行ってみる。じゃあしっかりとディーティウスを手伝えよ」

 

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