1.9. Story 1 《智の星団》へ

 Story 2 新しい時代

1 悪夢の未来

 サフィはシップの中で物思いに耽った。
 ナヒィーンが言った事は真実だろう。

 彼は自分とワンガミラの男、ケイジの関係を探ってはいけないと言った。
 これ以上詮索しないという条件で、ナヒィーンは次に向かうべき場所を示しただけでなく、その近くまでサフィを飛ばしてくれた。
 それほどまでして守らないといけない秘密というのもあったろうし、長い旅を経て年老いた自分の肉体では、もう長距離の旅ができないのを気の毒に思ったのもあっただろう。

 
 かつてルンビアと別れた銀河の果て、《虚栄の星》とは対角線の関係のもう一方の果てにある《智の星団》と呼ばれる場所――そこには五つの星、《蟻塚の星》、《凶鳥(まがとり)の星》、《迷路の星》、《機械の星》、《叡智の星》があった。
 五つの星を正しい順番に巡っていけば、人類の未来を含めた全てが見えるとナヒィーンは言った。

 
 サフィは今、そのうちの四つまでを訪ね終えた。
 《蟻塚の星》、《凶鳥の星》を見た時には、これのどこが未来なのかと半信半疑だった。
 《迷路の星》を見て、背筋を冷たい汗が流れる不安な気持ちになった。
 《機械の星》に降り立ち、そこの住人と会話する事によって漠然とした不安は具体的な形を取るようになり、気分が悪くなった。

 そして最後の《叡智の星》の上空にいた。
 サフィにはある予感があった。
 これ以上進めば、二度と広々とした宇宙に戻る事ができないのを。

 アダニア、信仰の力により《巨大な星》を正しい道に導く者よ。
 ニライ、来たるべき日に備え隠遁の地で一族を守る者よ。
 ウシュケー、バルジ教により銀河の多くの人を救済する者よ。
 エクシロン、英雄となり未来への希望となる者よ。
 ルンビア、苦悩の末、銀河一の星の礎を築く者よ。
 私はここで待っている。

 そしてケイジ、苛烈な運命を背負った剣士、未来に起こる事をじっくりと見せてもらおう。

 最後にアビー、私がここでこうして生き続けるのは貴女しか知らない。

 サフィは息を大きく一つ吐き、《叡智の星》に向かった。

 

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