先生は笑いながらあたしに尋ねた。
「どうしても行くのかな?」
あたしも笑いながら頷いた。
「君にはこちらに残ってほしかったんだがな」
「どうせ『死者の国』の管理人でもやらせるつもりだったんでしょ。つい最近、被創造物が生きたまま、『死者の国』を渡ったらしいじゃない?」
「大した情報収集能力だな――わかった。その者の顔を見てやろうと思っているんだね?」
「箱庭の世界に入り込んでみたい、誰でもそう考えるんじゃないかしら?」
「ああ、今までに何人もそういう人間を見てきたが、大概の場合は幻滅し、すぐに戻ってくる」
「あたしもそうなるって事?」
「いや、君が行こうとしている『九回目の世界』はそうならないんじゃないか。楽しくて、帰ろうと思わなくなる」
「まさか」
「まあ、実際に行って、その目で確かめるがいいさ」
あたしにはわかった。本当は先生だって、行きたくてうずうずしているのを。
「先生はいつ頃、来る予定なの?」
「――私は仕事が一段落するまでは無理だな」
「じゃあ、一足先にあっちで待ってるわよ」
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