1. Chapter 3 救世主

 Story 1 サフィとルンビア

 マックスウェル大公とは何者だったのか。
 彼は異世界から来たと言った。異世界もこの世界と同じなのか、あるいは天国や地獄のような場所か。

 彼は別れ際に「両親に会いたくはないか」と尋ねた。まるで彼の力をもってすれば、亡くなった両親に会えるかのような口ぶりだった。
 何も答えないでいると、彼は満足そうに頷き、「余計なお世話だったようだね。だが会いたくなったらいつでも言いたまえ」と言い添えた。

 彼が私たちに見せた幻、あれと同じように両親の幻を映し出すのか――何故かそうではないような気がする。幻ではない私の両親、ニザラとコニその人に会わせてやると言ったのではないだろうか。

 彼は少なくとも私よりは、いや、この世界の誰よりもずっと多くの事を知っている。本来、あのように知識のある人間こそが救世主を名乗るべきなのだ。
 今の私にあるのはちっぽけな世界でのわずかの経験と『山鳴殿』の書物から得た浅薄な知識に過ぎない。
 こんな事で世界を救えるだろうか?

 

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