サロンを訪れる顔ぶれもすっかり変わった。
いつも笑顔を絶やさなかったソントンは大学を退官後、《森の星》に移住した。
あの気に食わないデズモンドもどこかの辺鄙な星で行方不明になったと聞く。
サロンの華、エリザベートに起こった悲劇は最も辛い出来事の一つだった。《祈りの星》への巡礼途中に、劇団の舞台監督だった夫オーロイとまだ小さな娘と共に海賊に襲われて命を落としたのだ。
だが私の身の上に起こった事件ほど奇妙なものはないだろう――
「エテル、久しぶりじゃないか」
サロンのドアを開けて誰かが入ってきた。
「ユサクリスか。相変わらず良い作品を書いているみたいじゃないか」
「いやいや、啓示を与えてくれる人間が次々に去って、もはや出がらしさ。それより君はますます有名になっていくな。ダレンの連邦府、《七聖の座》の職員宿舎、今度はこの星の移民局も設計するらしいじゃないか」
「あんなのは大したものじゃないんだ」
「ははーん、君がそう言う時は必ず何か別の壮大な企みがある。一体何か教えてくれたまえ。このユサクリスに新しい楽曲へのモティーフを与えるためにも」
「仕方ないな。実は――」
また、サロンのドアが開いた。
「エテル様、ここにいらしたのですか?」
「どうした、ギンモンテ。そんなにあわてて」
「これはユサクリス様……」
「ギンモンテ、ユサクリスの前だ。秘密にする事は何もない。遠慮せずに言ってみろ」
「はい、『転移装置』に人間が転送されました――」
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