6. Chapter 4 ヒガント(巨大な星)

 Story 1 遠征前夜

 王都チオニはユグドラジルと呼ばれる大樹を中心に抱き、東西南北に拡張を続けている。
 私が今いるノカーノ広場は東の都にあった。
 東の都の突端にあるこの広場は、『全能の王』デルギウスがノカーノに出会った場所として知られている。ここに七聖の最後の一人が揃い『銀河の叡智』へとつながる、いわば、銀河の発展の始まりの地になる訳だ。

 私もデルギウスやノカーノのようにこの場所から始めよう。ただしそれは『銀河の叡智』などではなく魔導による銀河の支配だ。
 あの怪物の影響下から抜け出して、自分の思うままに星を支配するのだ。
 怪物とはもちろんドノスだ。あの男、ドノス王は『開明大司空』と呼ばれた昔から何千年に渡って転生を繰り返してきた化け物なのだ。
 善政を敷く名君と呼ばれているが、都では毎日何人もの人が行方不明になっている。
 皆、ドノスの毒牙にかかったのだ。一体、何万人の生き血を啜り、何千人の改造手術を行えば気が済むのだろうか――

 ――あの時、放浪者ノカーノがこの場所で思いにふけり、見つめていたものは何だったろう。『夜闇の回廊』か『忌避者の村』か、この星に多くある忌まわしい場所の一つに違いない。
 たとえ生命の樹、ユグドラジルがあろうともこの星は魔に染まっているのだ。

 私はドノス王から《巨大な星》に赴き、アダニア派とプララトス派の諍いを仲裁する命を受けた。
 聖サフィの教えを諳んじ、アダニア派にもプララトス派にも偏らない司祭という理由で私は選ばれた。
 ただそれは表向きの姿、私の実態は怪物ドノス王の右腕として人体改造に携わってきた黒魔術師だ。

 やがて私の名前は銀河に響き渡る。その時は恐怖の司祭マンスール、私をそう呼び、懼れ、ひれ伏すがいい。

 

別ウインドウが開きます

先頭に戻る