6. Chapter 8 《虚栄の星》

 Story 1 『錬金候』

 夜空を眺めれば無数の星がきらめきを放っている。自らの居場所を『上の世界』と呼び、観察者を気取ってはいるが、そんな自分たちも無数の星の中の被創造物の一つに過ぎないのを実感させてくれる、そんな夜空が好きだ。

 私は今日ある決断をした。それは『下の世界』に行き、そこで生活してみる事だ。
 行くべき場所も決めてある。私の教え子たちの中でもとりわけ研究熱心な子たちが造った箱庭、これまで八回の宇宙創造に失敗し、今はナインライブズと名付けた正体不明の存在に振り回されているあの箱庭を訪ねてみるつもりだった。

 評議会には辞表を提出した。ファカルティには散々慰留された。仕事が嫌であればマックスウェルのように異世界の傍観者になればいいとも言われた。
 しかし私がアビーの話を持ち出すと皆、押し黙った。結局女性の行動力には誰も勝てない。

 可愛い教え子たちが幾度もの失敗を経て作り上げた『天の川銀河』と呼ばれる箱庭。そこには人を引き付ける何かがあるようだ。私は明日からは一人の星読みとしてその渦の中に身を投じるのだ。

 あちらで見る空もこの星空のように美しくあってほしい、それが今の私の最大の願いだ。

 

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