6.6. Story 4 《七聖の座》

 Chapter 7 精霊

1 流星の斧

 リチャードは愚直に戦い続けた。胸元がミラナル・リアルの急所だとわかったが、攻撃が単発のためか、効果的なダメージを与える事ができなかった。
 長時間に及ぶ戦いでリチャードの動きは鈍っていた。ミラナル・リアルの腕が体を掴み、思い切り地上に叩きつけられ、踏みつけられた。
「ぐっ……」
 リチャードは反撃する力があまり残っていないのを感じ、天を仰いだ。

 
「これ以上は見ていられんな。銀河の英雄の最期か」
 上空のシップのネアナリスが呟いた。
「へい。後はミラナル・リアルに任せて先にシップで出発しましょう」とミーダも言った。「リチャードさん、色々とお世話になりやした。あんたの事は忘れねえっす」

 
 リチャードは仰向けに倒れたままミラナル・リアルの攻撃を待った。もう体が言う事を聞かなかった。
 視界の端に何かが見えた。傍に人が立っているようだった。
 ぼやけつつある意識の中で男の姿を捉えようとした。男は黒いコートのようなものを着ていて、頭が白かった。
 包帯?――
 声を出そうとしたがうまく出なかった。
 男が言った。
「お前を助ける訳ではない。勘違いするなよ――奴の弱点はどこだ?」
 リチャードは横たわったままで自分の胸元を指差した。

 
 男は長い柄に美しい彫り物の刻まれた刀身を持つ斧を携えていた。
「おれが相手だ」
 男は軽やかに空中に飛び上がり、斧を頭の上で振り回した。
 振り回した斧から白く燃えたぎった岩弾が次々に飛び出して、正確にミラナル・リアルの胸元に命中した。
 百発近い岩弾が胸元に当たると動きが鈍くなり、やがてミラナル・リアルは跪き、動きを停止した。
 男は再びリチャードの傍に立った。
「……」
 男はリチャードの無事を確認すると黙って去っていった。

 
 リチャードは真っ暗な天空を仰いだ。
 話したい事は山ほどあったが、追いかける力は残っていなかった。
 いつか又会えるだろうか……エスティリ……
 リチャードは静かに目を閉じた。

 

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