雑食紀行:麻布十番『茶路』

【2014年12月:閉店】

2008年頃から約6年間、地方出張時を除いてほぼ毎日昼食を食べに行った喫茶店。
きっと当時の身体の何%かは「茶路」でできていたと思う。

行き始めの頃はカウンターの上に大皿の家庭料理が幾つも並び、お店のお母さんと妹さんがそこから色々と見繕って食事を出してくれるシステムだった。
多くの場合、「カレー食べる?」と言って、ただでさえ五、六品ある所にカレーも追加してくれた。

その後、数種類の定食制にシステムが変更になったが、相変わらず「これ食べてみない?」と品数を増やしてもらったりした。

 

お店は有名な「あべちゃん」の二階にあったが、「あべちゃん」の隣にあったタバコ屋でマルボロライトを買って、「茶路」への階段を上がるのが日課だった。

ある日、「そうそう、下のタバコ屋でライターいっぱいもらったから使う?」とお母さんに聞いたら、ありえないほどのびっくり顔をされた。
お母さんによれば、タバコ屋のお姉さんはタバコを買いにくるお客さんに対して滅多に話をしないような変わった人だったらしい。
もちろんお母さんも何十年の間、まともに話した事が一度もなかったらしかった。

「えっ、別に普通に話すし、笑うよ」と言うと、お母さんは「あの人、独身よ。チャンス到来ね」と言ってにやりと笑った。

それからお母さんと妹さんは本気で逆玉作戦を立てて盛り上がっていたが、こっちも結婚してる身なんで。

その後、タバコ屋はなくなり、「茶路」もお母さんの具合が悪くなり閉店した。
写真は閉店の日だったか、「閉店するの」とお母さんの妹さんから伝えられた日に撮ったものだ。